【相対論】 ローレンツ変換とブーストの違い


「ローレンツ変換」と似た意味で使われる用語として「ローレンツ・ブースト」「ブースト」などがあります。

本記事ではこれらの違いについての私なりの理解を書きます。
(間違いなどあればご指摘ください)

結論

結論から言うと、ローレンツ・ブーストはローレンツ変換に含まれます

ローレンツ変換には下記2種類の変換が含まれます。

(A) 速度の異なる座標系への変換
(B) 空間的に回転した座標系への変換

(A) のことを「ブースト」とか「ローレンツ・ブースト」と呼びます
「ブースト」とは「押す」という意味なので、「押して速度を変える」というようなニュアンスです。

ただ「ローレンツ変換」と言えば(A)のローレンツ・ブーストことを指すことが多いです。

ローレンツ変換に(A)と(B)が含まれる理由は、ともに時空の距離
$$s^2 = x^2 + y^2 + z^2 – (ct)^2 \tag{1}$$を一定に保つ変換だからです(時空の距離の定義式には方言がいろいろあります。詳細はこちら)。

(A) について

具体的には次のように書けます(x方向のブーストの場合。導出過程はこちら)。
$$
\left(\begin{array}{c}
ct’ \\ x’ \\ y’ \\ z’
\end{array}\right)
=
\begin{pmatrix} \gamma & -\gamma \beta & 0 & 0 \\ -\gamma \beta & \gamma & 0 & 0 \\ 0 & 0 & 1 & 0 \\ 0 & 0 & 0 & 1 \end{pmatrix}
\left(\begin{array}{c}
ct \\ x \\ y \\ z
\end{array}\right) \tag{2}$$
この変換が(1)の \(s\) を一定(不変)に保つことは、次を計算することで確認できます。
$$x’^2 + y’^2 + z’^2 – (ct’)^2 \\
= (-\gamma \beta ct)^2 + \gamma x)^2 + y^2 + z^2 – (\gamma ct -\gamma \beta x)^2 \\
= \cdots \\
= x^2 + y^2 + z^2 – (ct)^2$$

(B) について

(B)は単なる空間座標の回転です。時間座標はそのままです。
高校数学でやった2次元の座標系の回転
$$
\left(\begin{array}{c}
x’ \\ y’
\end{array}\right)
=
\begin{pmatrix} \cos{\theta} & \sin{\theta} \\ -\sin{\theta} & \cos{\theta} \end{pmatrix}
\left(\begin{array}{c}
x \\ y
\end{array}\right) \tag{3}$$のことです。

(3)を4次元で書きなおすと次のようになります。
$$
\left(\begin{array}{c}
ct’ \\ x’ \\ y’ \\ z’
\end{array}\right)
=
\begin{pmatrix} 1 & 0 & 0 & 0 \\ 0 & \cos{\theta} & \sin{\theta} & 0 \\ 0 & -\sin{\theta} & \cos{\theta} & 0 \\ 0 & 0 & 0 & 1\end{pmatrix}
\left(\begin{array}{c}
ct \\ x \\ y \\ z
\end{array}\right) \tag{4}$$(3)で省略していた \(ct\) 成分と \(z\) 成分を追加しただけです。

この変換が(1)を不変に保つのはいいですよね。
空間の回転では \(ct\) が一定で、かつ \(x^2 + y^2 + z^2\) が一定だからです。

余談

(A)と(B)は(1)を不変に保つということ以外にももうひとつ共通点があります。
それは
ともに座標の回転を表す
ということです。

「(B)が回転なのはいいとして、(A)が回転ってどういうこと?」
と思われるかもしれません。

(B)は2つの空間軸で張られた平面内の回転です。
それに対して(A)は、実は時間軸と空間軸で張られた平面内の回転を表していると解釈することができるんです。ただし時間軸も回転の角度も虚数なのですが(^^;

これについてはこちらの記事に書きました。



参考:
http://dreistein.hatenablog.com/entry/2015/04/30/080000
https://okwave.jp/qa/q746455.html
http://osksn2.hep.sci.osaka-u.ac.jp/~naga/kogi/konan-class04/app-b-lorentz.pdf



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