非相対論的な自由粒子の作用は、ガリレイ変換で不変でない


ある変換に対して作用が不変でなくても、作用の変分から得られる運動方程式が共変になる例として、非相対論的な自由粒子のガリレイ変換があります。

具体的に以下に示します。


簡単のため1次元空間で考えます。

観測対象の自由粒子 A が、慣性系 1 に対して速度 \(\dot{x}(\equiv \frac{dx}{dt})\) で移動しているとします。

このとき、慣性系 1 から見た自由粒子 A の作用 \(S\) は、運動エネルギーの時間積分の形で次のように書けます。
$$S = \int_{t_i}^{t_f}{\frac{1}{2}m \dot{x}^2 dt} \tag{1}$$
(1)のラグランジアン \(L\) は
$$L = \frac{1}{2}m \dot{x}^2 \tag{2}$$なので、ラグランジュ方程式
$$\frac{d}{dt} \left( \frac{\partial L}{\partial \dot{x}} \right) = \frac{\partial L}{\partial x}$$に(2)を代入すると、
$$\frac{d}{dt}\left( m \dot{x} \right) = 0$$$$m \ddot{x} = 0 \tag{3}$$(3)が慣性系 1 から見た自由粒子 A の運動方程式です。


一方、慣性系 1 に対して時間変化しない相対速度 \(\dot{x}_0\) で移動している慣性系 2 から自由粒子 A を観測すると、慣性系 2 から見た自由粒子 A の速度は \(\dot{x} – \dot{x}_0\) なので、その作用は
$$S’ = \int_{t_i}^{t_f} \frac{1}{2}m \left(\dot{x}-\dot{x}_0 \right)^2 dt \tag{4}$$と書けます。

(1)と(4)を比較すると、非相対論的な自由粒子の作用は、ガリレイ変換で不変ではないことがわかります。

慣性系 1 の場合と同様にしてラグランジュ方程式は、
$$\frac{d}{dt} \left( m(\dot{x} – \dot{x}_0) \right) = 0$$\(\dot{x}_0\) は時間に依存しないので
$$m \ddot{x} = 0 \tag{5}$$
(3)と(5)は一致するので、非相対論的な自由粒子の運動方程式は、ガリレイ変換で共変であることがわかります。
共変とは、式の形が変わらないということです。



参考:「初級講座弦理論 基礎編」p.88 計算練習5.1

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