【量子力学】 状態と波動関数の違いは?


量子力学の「状態」と「波動関数」の違いを私なりに説明してみます。

「状態」というのは文字通り、「ある状態」を表します。
「波動関数」は、「観測したときに各状態になる確率を並べたもの」です。



■(例1)離散的な状態の重ね合わせ

例えばあるサイコロについて、
・1か2の目が出た状態を \(|1,2\rangle\) 、
・3か4か5の目が出た状態を \(|3,4,5\rangle\)、
・6の目が出た状態を \(|6\rangle\)
と書くとします。
\(|1,2\rangle\) の状態を取る確率は \(\frac{2}{6}\)、\(|3,4,5\rangle\) の状態を取る確率は \(\frac{3}{6}\)、 \(|6\rangle\) の状態を取る確率は \(\frac{1}{6}\) です。

この場合、そのサイコロに蓋をしてどの目が出ているかわからない状態 \(|\Psi\rangle\) (大文字のプサイ)は、次のように書くことができます。
$$|\Psi\rangle = \sqrt{\frac{2}{6}}|1,2\rangle+ \sqrt{\frac{3}{6}}|3,4,5\rangle+ \sqrt{\frac{1}{6}}|6\rangle \tag{1}$$グラフに描くとこんな感じです。
各状態の係数 \(\sqrt{\frac{2}{6}}, \ \sqrt{\frac{3}{6}}, \ \sqrt{\frac{1}{6}} \) は、2乗するとそれぞれがかかっている状態を観測する確率(\(\frac{2}{6},\frac{3}{6}, \frac{1}{6}\))になります。これらの係数 \(\left(\sqrt{\frac{2}{6}},\sqrt{\frac{3}{6}}, \sqrt{\frac{1}{6}}\right)\) の組を波動関数と言います。

つまり、このグラフの横軸が状態で、縦軸が波動関数です

また、 \(|1,2\rangle, \ |3,4,5\rangle, \ |6\rangle\) も「状態」ですが、それらの線形和 \(|\Psi\rangle\) もまた「状態」です。


■(例2)連続的な状態の重ね合わせ

もう1つ例を挙げましょう。

ある粒子が x 軸上のどこかにいてその座標が不明な場合、その状態 \(|\Psi(t)\rangle\) ((1)に相当するもの)はどう表されるでしょうか?

いきなり答えを書いてしまいます。位置 \(x\) にいる状態を \(|x\rangle\) とすると、
$$|\Psi(t)\rangle = \int_{-\infty}^{\infty} \psi(x,t) |x\rangle dx \tag{2}$$です。\(\Psi\) (大文字のプサイ)と \(\psi\) (小文字のプサイ)の違いに注意してください。

こちらもグラフに描くとこんな感じです。
(2)は(1)のアナロジーで考えると理解しやすいと思います。
(1)は足し算だったのに対して(2)は積分になっているだけです。
((2)に \(dx\) がつく理由をきちんと説明すると面倒なのでとりあえずここでは「つけないと発散してしまうから」としておきましょう)

このグラフでも横軸\(|x\rangle\) が状態で、縦軸 \(\psi(t,x)\)が波動関数です
波動関数がようやく波動「関数」らしくなりましたね。こちらの例では、波動関数に時間依存性があることにしました。グラフの波がゆらゆら時間変化するイメージです。

また、(1)と同じく\(|\Psi(t)\rangle\) もまた「状態」です。\(|\Psi(t)\rangle \) は \(t\) にのみ依存します。


■ シュレディンガー方程式は?

シュレディンガー方程式は、\(|\Psi(t)\rangle\) について成り立ちます。
$$i \frac{\partial |\Psi(t)\rangle}{\partial t} = \left( – \frac{1}{2m^2} \nabla^2 + V(t,x) \right) |\Psi(t)\rangle \tag{3}$$これに(2)を代入すると
$$\int_{-\infty}^{\infty} \left\{ i \frac{\partial}{\partial t}\psi(t,x) – \left( -\frac{1}{2m^2} \nabla^2 + V(t,x) \right)\psi(t,x) \right\} |x\rangle dx = 0$$異なる \(|x\rangle\) が打ち消し合うことはないので、これが成り立つためには { } の中がゼロである必要があります。つまり
$$i \frac{\partial \psi(t,x)}{\partial t} = \left( – \frac{1}{2m^2} \nabla^2 + V(t,x) \right) \psi(t,x) \tag{4}$$状態を含まない、見慣れた「時間を含むシュレディンガー方程式」が得られました。

教科書にはシュレディンガー方程式として(4)がいきなり書かれていることが多いですが、大元は (3) だと考えると整理しやすいと思います。


参考:
・「初級講座弦理論 基礎編」p.263あたり


2

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です