自然単位系での各物理量の次元一覧


(本記事では、 \(c=\hbar=1\) (次元なし)とおいた単位系を「自然単位系」と呼ぶことにします。)

場の量子論などでよく出てくる自然単位系。
各物理量を自然単位系で表すとどういう次元になるかの一覧をまとめておきます。


■ SI単位系から自然単位系への変換公式

SI単位系から自然単位系への変換規則は次のとおりです。

ある物理量の次元がSI単位系で \(M^p L^q T^r\) だとすると、自然単位系での次元は \(M^n = M^{p-q-r}\)
(\(M\)は質量の次元)

(導出は最後に書きました)


■ 自然単位系での物理量の次元一覧

自然単位系では上の変換式に従って次元が変換されます。それによって、SI単位系では異なる次元だった物理量でも、下表のように多くの物理量が共通の次元を持つことになります。

自然単位系\(M^n\)のn物理量SI単位系\(M^p L^q T^r\) の (p, q, r)
1質量1, 0, 0
運動量1, 1, 1
エネルギー1, 2, 2
波数ベクトル0, -1, 0
Klein-Gordon場 \(\psi(x)\)1/2, 1/2, -1
電磁場 \(A^\mu (x)\)1/2, 1/2, -1
-1長さ0, 1, 0
時間0, 0, 1
0作用、角運動量1, 2, -1
速度0, 1, 1
微細構造定数0, 0, 0
電荷1/2, 3/2, -1
4ラグランジアン密度、
ハミルトニアン密度
1, -1, -2
3/2Dirac場 \(\psi(x)\) と \(\tilde{\psi}(x)\)0, -3/2, 0
特に自然単位系では

時間 = 長さ = (1/質量)= (1/エネルギー)

になることを覚えておくと便利です。


■ \(M\) でなくてもOK

上の表で \(M\) (質量) を基準にとっている理由は、変換後の基本的な次元を下記のの3つ(\(M, A, V\))に設定してから \(A\)と\(V\) を無次元化したからです。
 ・質量\(M\)
 ・作用\(A\)(\(\hbar\)の次元)
 ・速度\(V\)(\(c\)の次元)

変換後の基本的な次元は \(M, A, V\) 以外にも \(L, A, V\) (\(L\):長さ) や \(E, A, V\) (\(E\):エネルギー) にとった方が便利な場合もあります。その場合、上の表の n の値は変わりますが各グループの顔ぶれは変わりません。


■ \(M^n = M^{p-q-r}\) の導出

変換前の次元 \(M,L,T\) と変換後の次元 \(M, V, A\) の関係は、\(V\)(速度)の単位が[m/s]、\(A\)(作用)の単位が [J・s]であることを考えると
$$M = M, \ \ V = \frac{L}{T}, \ \ A = \frac{ML^2}{T}$$なので
$$L = \frac{A}{MV}, \ \ T = \frac{A}{MV^2}$$\(A=V=1\)とおいて \(A\) と \(V\) を無次元化すると、
$$L=\frac{1}{M}, \ \ T=\frac{1}{M}$$よって
$$M^p L^q T^r = M^p \left(\frac{1}{M}\right)^q \left(\frac{1}{M}\right)^r = M^{p-q-r}$$


参考:
場の量子論〈第1巻〉量子電磁力学 p.103



場の量子論: 不変性と自由場を中心にして (量子力学選書)

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